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マレーナのyuのネタバレレビュー・内容・結末

マレーナ(2000年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

レナートの視点からしか書かれていないからこそ、色々な見方ができる作品だと思う。

女性達が戦時中で苦労したり鬱憤も溜まってる中、綺麗な服と高いヒールを履いて街を闊歩するマレーナ。きっとそれが彼女の美学なんだろう。
友達もいるように見えないし、完全に「孤立している」状態。

戦争で夫を亡くして、難聴の父親も高齢で、、小さな街で頼る人間もいない状態では、戦中に女1人が簡単につける職があるはずもなく。

最後に夫とシチリアに戻ってきたマレーナ。
死ぬほど辛い思いをしたはずの故郷になぜ戻ってきた?
きっと片腕をなくした夫が仕事のツテを辿るなら、ここしかないとなったんだろう。

以前より少し低いヒールを履いて、地味なカーディガンを着て市場を恐る恐る物色するマレーナに、かつて壮絶なリンチを加えた女たちが平然とあいさつをする。
そうして少し口角を上げながら、彼女がどんな反応をするか見ている。
張り詰めた緊張感の中で、互いに目を逸らさないマレーナと女たち。
数十秒にも感じる沈黙の後、マレーナが挨拶を返すと、徐々に女たちはマレーナを輪の中に引き入れる。

最初から最後まで、この映画はなんだか原始的な何かを感じた。
人間には道徳とかそういうものを考える前に、動物的な部分があって、それが剥き出しになったような。
戦争という極限状態が、彼女を、彼らをそうさせるのだろうか。

最後に体を傾かせながら、膨らんだ買い物バッグを二つ下げて、1人で家路につくマレーナ。
レナートが「マレーナさん、お幸せに」と声をかける。
笑顔とも、泣き顔とも取れない、複雑な表情を浮かべるマレーナ。

夫が戻ってきたことは、彼女に取って幸せだったのだろうか?
そんなことを考えさせられるラストだった。
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