戦時下で皆がイカれている状況下。
美しく色香漂うマレーナに嫉妬する女たち、彼女の身体を狙う男たち。
生きる為に娼婦に身を窶したと言うのにドイツ兵と付き合ったとのお題目で女たちは彼女を袋叩きにする。それを止めようとしない男たち。
嫉妬と欲望の狭間でマレーナは翻弄された。小さなテリトリーでの村八分は陰湿だ。
しかし、もしも彼女にもう少し世の中を立ち回る素質が有ればもっと生きやすかったのではないか。
己の美を強調せず、身体の線を隠し、夫を亡くした哀れな女を演じていれば…とは思う。
日本も戦時中は贅沢は敵だとのスローガンを掲げ、そこから外れる者は叩かれた時代。何処の国でも同じ様なことは起こっていたのだな。
異常な時代には人間の醜い部分が浮き彫りになりがち。結局恐ろしいのは人間の心なのだ。
マレーナが夫と共に村に戻って来たのは村人たちへの復讐なのだと思う。
彼らは彼女を見る度に嫌でも自分たちが彼女にした仕打ちを思い出し罪悪感に苛まれることになるのだから。
市場に現れたマレーナを腫れ物に触る様に接する女たち。
この先、何十年も彼女と夫は村の者たちをしもべとして暮らして行くのだろうか?それで無ければ村に戻って来た意味が無いと自分は思う。
それにしても美貌の使い方はやり様によって吉とも凶とも出るものなのだなとつくづく感じた。