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青べか物語のENDOのレビュー・感想・評価

青べか物語(1962年製作の映画)
4.2
Yeah!!!という豪快な東野英二郎の挨拶と共に青べか船を半ば強引に購入させられ始まる浦粕町(浦安)の悲喜交々!高度経済成長中の日本で沖の百万坪と呼ばれるほどの遠浅の干潟にいる海産物によって生計を立てる人々。普段とは打って変わって完全なる部外者である物憂げな森繁が逗留する。とにかく水平線を生かしたショットにスケールを感じる。曇天は彩度を均一にしその風景の美しく湛える。左卜全の生活する蒸気船が宵闇に沈んでいく光景だけで郷愁に駆られる。左幸子が馬乗りで森重を押さえつけるスピードは異常!彼女の振る舞いは画面を振動させまくって突き抜けそうだ。乞食娘の小さな魂。のぼりが"おっ立つ"かどうか?出歯亀と嘲笑しか娯楽がない浦粕の人々に揉みくちゃにされる森繁。だがいずれ遠くないうちに消えるであろうべか船の暮らしに現代人は寂しさを覚えずにはいられない。作家に逃避できる場所があった最期の時代であったのかも知れない。泪なくして橋は渡れない。失われた日本の原風景を捉えたこの時代この国でしか撮ることができないであろう傑作!
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