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青べか物語のeulogist2001のレビュー・感想・評価

青べか物語(1962年製作の映画)
3.2
山本周五郎の原作はそのタイトルのユニークさとかわいい感じから気にはなっていたが、実際に手に取るまでにはいたっていなかった。今回、本作を通して間接的に味わうことができた。

浦安の60年代初頭の風俗が非常に興味深い。当然だが、現在とは異なり、子どもから大人まで、性や他人に対して野卑で露骨である。清濁併せ持つエネルギーに満ちている。豊かな人情と言ってしまえばキレイだけれどそこにはおせっかいな欲望と下品さが張り付く。そもそも他者への好奇心にはそうしたいやらしい気持ちが少なからず含まれるのは明らかだとは思うし、都会人からしたらまことに鬱陶しい。

そこから20年。その浦安に憧れのアメリカ産の娯楽エンターテイメント施設の鼠の国が作られて、周辺に住む人たちがマリナーゼなどと称されることになるのは偶然なのか。

都市と隣接した田舎町のコンプレックスや羨望、それと裏腹の憎悪にも似た思い。愛憎相まった期待と欲望。そうした田舎者たちの価値観の反転、あるいは飛躍というよりは浮世離れした「夢の世界」への逃避かもしれない。(現代の都市というのは、「田舎者たちの夢の実現」だとだれかが言っていた気がする)

しかしながら、その底流には本作に描かれている「人間の欲望」が横たわり、その露骨で野卑なお下品さは巧妙に隠してオシャレな別の衣を纏う。

隠すか隠さないか。その差はあれど中身はまったく変わっていないのだ。いや、隠す知恵を持っただけより下品になっていると考えることも可能だろうか。もちろん当の本人たちがどう自覚しているかは分からないけれど。

ざっくりとそんなことを縁の薄い知り合いから興味半分に聞きました。
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