「ヤンヤン 夏の思い出」のショットは淀みなく雄弁である。
ガラスの持つ反射機能によって達成される正面と横顔、正面と背中を同居させたショットは、
人を邪魔しまいとする配慮と、自分は見られていないという優位とが同居しあった慎しくも狡猾な視角である。
周囲の鈍い逆光を受け止めた無言の人影を浮かび上がらせるショットは、静謐な透明さが漂っている。
もちろん、こうしたことは、古典的な映画にあっては決してめずらしいものではない。
しかし、この作品の素晴らしさは、こうした無媒介的に淀みなく雄弁なショットの連鎖が巧みに按配することで、人を見ることの「現在」へと誘いこむことにある。
これこそ映画というものだと寡黙に呟いている。
