映像芸術の最高峰。
わかりやすい教訓はない。ただひたすらに残酷な現実が、卓越した脚本と目もくらまんばかりの美麗な撮影によって、どこまでも優雅にどこまでもささやかに展開される。
現実が夢のように美しくないなら、朝が来るたび不安を感じるなら、なぜ人は目覚め続けなければならないのか。覚めながら見る夢にも似た映画という形式だからこそ、この問いの身を切るばかりの切実さが沁みる。そして最後の瞬間に訪れる、わずかばかりの光の筆舌に尽くしがたい眩しさたるや。
誰に頼んだわけでもないのにこの世に産み落とされ、人生という名の悲しみや不条理を強制的に背負わされた気分になったことがある、すべての人々のための映画。