三宅邦雄

ヤンヤン 夏の想い出の三宅邦雄のレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
3.9
東京に住むものとしては、やはり東京の最初のショットが大変印象的であった。ヴェンダースが映す東京のように、普段見えずとも私を突き刺す街の不気味さを完璧に撃ち止めている。台湾パートにおいてキャメラは登場人物をたしかに人間的に描いている。それはネオレアリズモ的な街中のロケによるものかもしれないし、街の汚れによるものかもしれない。ただ、人間的だと感じられるのだ。しかし日本にはどこか非人間的なものを感じざるを得ない。鏡越しのショット、トランプ、人のいないホテル。とにかく不気味なのだ。東京への出張は、NJが一度否定しかけた人間の性を、ヤンヤンという最も衝動的ー人間の根源に沿っているーな息子がいる台湾に戻り再確認する、そうした象徴的な構造があるのでははかろうか。『恋愛時代』もそうであるように、ヤンは人間とは何かを内容と形式のアマルガムによって絶えず追求しているのだ。
三宅邦雄

三宅邦雄