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ヤンヤン 夏の想い出のsyoのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.3
素晴らしかった。ここまでくらったのは久しぶりかも。単に「ノスタルジー」という言葉で片付けたくない。この映画には歓喜も悲哀も優しさも残酷さも儚さも美しさも、人生の全てが詰まっている。
面白かったのは家族を描いた作品なのに一家団欒のようなシーンはほぼなかったこと。集まるのは結婚式とお葬式ぐらい。というか家にいるシーンもほとんどなかった気がする。

ヤンヤンの言う「お互い何が見えてるかわからないとしたら、どうやって分かりあうの?」という8歳にしてはあまりにも鋭すぎる質問。これに答えられる大人はそうそういないだろうな笑。そしてこの問いこそ、この作品の全てなんだろう。
背中のカットが特徴的なようにヤンヤンからは見えない家族の姿、その半分を描く今作。
確かに考えてみれば、僕も両親の両親としての面しか知らない。これまでどのような人生を送ってきたのか、断片的な情報しか知らない。でもそれは両親から見た僕にも当てはまって家にいる息子としての僕しか知らない。学校やその他の自分は見たことがない。家族というのはヤンヤンの言う通り、半分しか見えていない存在、なのに他の誰よりも強く結びついているのは不思議と言わざるを得ない。

父親の知られざる青春、姉の危険な恋、ヤンヤンの淡い恋模様。特に父と姉の恋模様を対照的に見せる演出には感動したし、同時に切なくもなった。あれは天才。
そしてこの映画の最も興味深い点は、「死」を予感させるシーンが度々挿入されること。そこに走る緊張は人はいつ死ぬか分からないというメッセージなのかも知れない。

彼らのこの先の人生まで見てみたいと思ってしまうぐらい物語に入り込んでしまったのは初めて。
また少し大人になった時に観たら今と同じような感情になるのかな。それともまた違った感情を抱くのかな。
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