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ヤンヤン 夏の想い出のshikibuのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
5.0
ヤンヤンとその家族におこる、さまざまな、けれども普遍的な人生の出来事を、淡々と、時に美しく切り取った群像劇。
真実の半分、前の部分しか人間は知ることができない。
しかし、だれかがいてくれれば、見てくれれば、後ろの部分を見ることができる。
楽しいことも、悲しいことも、起きるが、それを一面的にとらえず、絶えず画面はショットの連なりと距離感、反射される窓ガラスの風景と合わさった二面性で、多様性を帯びていく。
コンドームは教師に水をかける風船にもなるし、いじわるな少女はスクリーンに映る稲妻の前に立ち、少年に恋心を抱かせる。鳩との戯れる様子を見て魅了されるし、流しっぱなしのシャワーの音や、倒れるチェロは、何か不吉なものを予感させ、祖母がくれた蝶の折り紙は人生の希望にもなりうる。
父と古い交際相手の昔話と、その娘の淡い恋模様の連関は見ている観客にしかわからない。
理想や悲劇の裏側。それを人にみせようと少年は人の背中を撮り続ける。そして彼は最後に告げる。「いつかおばあちゃんみたいに、人にものを教えれる人になりたい。みたことのないものを人に見せたい」

人生はやり直す必要なんてない。
大事なことは物事をどう見つめるかということ。

映画が好きでよかった。またいつか見直したい。
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