吉田

ヤンヤン 夏の想い出の吉田のレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.0
「ヤンヤンが夏休みに冒険する映画なのかな」と、勝手に思っていたんですけど全く違いました。邦題より原題の方が合ってますね。
ヤンヤンを取り巻く人たちの間で起こる様々な事にヤンヤンの何気ない一言や言動でその問題の本質が浮き彫りになるような...ひたすらにヤンヤンが愛おしく可愛かった。
エドワード・ヤンの映画はラストシーンで「卑怯だなぁ...」と思わせるカットが多くて、小説を読み終えた時の読後感のような不思議な気持ちにさせられます。
映画の感想で「長かった」と言うのはナンセンスだと思うのですが、それにしても3時間は長かった。大きな盛り上がりのある内容では無く淡々と物語が進むので、各々の登場人物に対して丁寧にスポットライトは当たっているんですけど、人と人が交わり合う中に漂う都市的な無機質さを映し出すことに長けている監督だと思うので、今作はそれがより色濃く出ていて、いまいちのめり込めませんでした。ヤンヤンに感情移入しようにも出番が少ない...。
「恋愛時代」の方が入り組んだプロットだったと思うんですけど、あちらはよりタイトにまとめられていて無機質さも映画的な世界に合っていて良かったと思います。
本作の話に戻りますが、ヤンヤンが視聴覚室のような部屋で女の子に見惚れていたシーンは素晴らしかったです。大人になると色んなことを複雑化して考えるようになりますが、ヤンヤンがカメラ越しに見ていた世界が大人になると見えなくなってしまうのでは無いのでしょうか。無意味に思えても意味のある事の方が多いように思いました。
吉田

吉田