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ヤンヤン 夏の想い出のtoriten45のレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
5.0
最初から最後まで気持ちが惹きつけられっぱなし。数年に一回あるかないかの映画との出会い。だからベストスコア。このために映画を観続けるんだろうなー。

ラストまで味わい深いですがオープニングの家族写真のシーンが一番印象深かったかも…。

それとヤンヤンのお手紙が幼い子らしくて、あどけなくて、たわいもなくも聞こえるのですが、とても心に染み入ります…。全編しみじみとした気分で観続けることができる。ラストを迎えてこの世界から離れるのが寂しくなる。台湾に行ったことなく、馴染みのない外国の話なのに不思議。

『牯嶺街少年殺人事件』('91)に並ぶぐらいの傑作で、監督エドワード・ヤンは世界を代表する表現者なんだなー、と確信しています。

都会に住むヤンヤンは8才の少年。この作品は彼の家族とその周辺を中心に描いた群像劇です。日本の映画を観ているような身近な世界観に親しみを感じつつ、グイグイと引き込まれていきます。

都会の高級マンションに住み、ハタから見ると一見裕福で幸せそうな登場人物たち。その反面、ヤンヤンの周りでは実に多くの問題が進行してゆきます。伯父の結婚、祖母の脳卒中、姉の初恋、父親の昔の恋人との再会や会社経営の話などなど。これらが控えめな描写で淡々綴られていきます。

それぞれ悩みを抱えて生きている家族たち。その悩みを昏睡状態の祖母に語りかけてゆく。ピュアな心を持つ少年ヤンヤンはそんな大人を不思議に思っているようです。

ドロドロとした人間模様。それと対比させているように映像からは透き通ったような瑞々しさが感じられます。それらひっくるめて“美しい”の一言で纏められる作品かな。ダラダラと書いちゃったけどね。
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