このレビューはネタバレを含みます
エドワードヤン遺作、ある台湾の家族
2009年12月27日 16時13分レビュー
2000年作品。カンヌ映画祭監督賞受賞、脚本監督エドワードヤン。
「ヤンヤン夏の思い出」と聞くとなんかノスタルジックな牧歌的、同じ台湾監督ホウシャオシェン的先入観をもって見ていたのだが、やはりエドワードヤンです。
素晴らしい迷走、混在、引きの画満載。
いつものエドワード被写体がより輝いてみえた素晴らしい作品でした。
ヤンヤンという可愛い小学生。彼が住むある台湾の現代家族の物語。
とくに劇的なことも歴史事象も挟まることなくわれわれが日常ある現実に限りなく近い。
エドワードヤン的アプローチで家族に迫った作品。
物語は説明しませんが、いつものエドワード監督なんです。
日本人の奇妙な心の交流を魅せる役にイッセー尾形さん。
彼のつたない英語、メッセージも必見。
日本の風景もでてきます。イッセーさんの歌のシーン必見。
エドワードヤンの音楽もまたいいです。
お父さんがイヤホーンできいてるのが、口添えの歌ですが多分アメリカのオールディーズですね、あれ、エルビスも口ずさんでたかな?
お姉さんが弾くおそらく
ガーシュインの「サマータイム」のなにげないシーンがとても好き。
ガーシュインのこの曲好きですねー。
自分はものすごい変な角度から知ったんですが
ファンボーイスリーというイギリスのバンドのサマータイムからしりました。
これがめっさいいんです。
あと有名どこコルトレーンとか、アートぺッパーとか。アートペッパーのサマータイムは今年17回ぐらい?
聞きました。いいんですよねあのひつこいサックス、、、脱線
扉を開けると 鳥の声、雷、雨、水の音、
次のシーンへはやく侵入する音声のデリケートなフレームイン
こういう描写力が格段に素晴らしいんです。
エドワードヤンの引きの「構図」
ものすごく引いた位置から演者をとらえて音声だけはいる長廻しをやります。
そして突然ドロリとおちてくる感情のなまなましい告白、独白。
素晴らしく届いてくるんですね、こちらに感情が、、。
多少名前、だれやだれやらヤン監督の映画はわからなっくなってしまうんですが、
そんなことも吹き飛ぶほどにフィルムの間と間の素晴らしい行間に魅せられるんです。
よく部屋の内装をみると豪華な家、ハイソな家庭。部屋にはバットマンとロビンのポスター、ヘップバーン、ジェームズスチュワートの写真、、。
エドワードヤンの「光」明るい光、信号の緑から赤、、、手前に男と女、、、。
雷鳴、雷光、スライド、無機質なアナウンス。このシーン大好き。
エドワードヤンの日常と「ラブ」
日常のうまく行かない人間関係、いろんな形のラブ、風景、人生の時間が切り取られていきます。
エドワードヤンが最後に見せた家族のリアルな心情吐露。
彼に映画を撮らせた日本人プロデューサーにリスペクト。
あと本当になくなったのが悔やまれます。
世界のエドワードはもうすぐそこにあった気がするのに、、、、。
いつになくブライトな明るめな色調の画面。
ヤンヤン少年の妙に賢い、へりくつ。存在に癒されること間違いなし。
ヤンヤン家族の台湾の一日、二日目、、、、、毎日の日々。
複雑に絡む人間、登場人物から浮き出る生の感情の素晴らしさ、
閉じ込め方、魅せ方、音楽、カメラアングル、。
ヤンヤンの撮った写真のように人の見れない裏の側面を飾ることなく明るめに見せてくれた
エドワードヤンの最後のエッセイに見えました。
追記
「カップルズ」に出演してた同一人物じゃないと思いますが、
ニューヨークベーグルの店のシーンで「レッドフィッシュ」なるキャラが再登場します。
監督のお気に入りキャラなのかな?
追伸
本作をオールタイム10本にあげたタナダユキ監督に感謝いたします。