カレーをたべるしばいぬ

プロメテウスのカレーをたべるしばいぬのネタバレレビュー・内容・結末

プロメテウス(2012年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

特別面白くはないけど何回も観てしまう作品。深いテーマを描くことに突き詰めた結果、ふんわりとした作品になったエイリアン0。

■恐怖の種類
ジャンプスケア
暴力描写もあるが、ホラーというよりアクションに近い

■色々な親子関係や上位・下位存在が描かれる
エンジニアと人類、エリザベスと胎内のモンスター、資産家とアンドロイド。上位存在と下位存在が遭遇した時の、両者の認識齟齬。

■神話のプロメテウスのように
神から盗んだ火を人類に齎した巨人プロメテウス。神話には巨人の遺骸からヒトが発生する設定が多いので、この辺りで深い考察ができる気がする。ダヴィンチコードやヘレディタリーのような、神話や宗教的な観点からのアプローチが必要になる。

■不穏な空気の演出が凄い
エイリアンシリーズらしく、リドリー・スコット特有の「何かが起こりそう」感が凄い。世界観と雰囲気の描写も丁寧。宇宙のどこかであると自然に受け取れる。デヴィッド役、マイケル・ファズベンダー氏の怪演も良い。同氏はX-MENにて、若年期のマグニートーでお馴染み。

■登場人物がポンコツ
こちらもリドリー・スコット特有。ヒューマンエラーがなければエイリアンは始まらない。意見は食い違うし、判断は誤るし、異常には気づかない。

■「こういうことなんだぞ!」(は、はぁ・・・)
強弁的な展開が多くハテナが浮かびやすい。壁画に共通点があるというだけで人類の起源が分かることになっているし、それに完全に乗り気になって超長距離航行が可能な宇宙船を出資する資産家がいる。
「ここは宇宙人の兵器開発のための実験場だったんだ」という洞察も唐突だし、後述の起源説についてもイマイチ。いきなり、汚物は消毒だ!ボォーーー🔥
とどのつまり、説明が疎かな部分が多い。ぼやけた造りにする意図があることは明白だけど、考察として楽しめる範囲・続編で回収される範囲を超えてぼやけている印象。

■ダーウィン論を否定する?
映画中の表現では、地球の生物はエンジニアが水中に溶けたことで撒き散らされた遺伝子によって生まれたように受け取れる。ただしそこからムクムクと人間がすぐに生まれたような描写はなく、どのような生物相が発生したのかも分からないため、結局は猿から進化している可能性を否定することになっていないように思える。

■アンドロイドの万能感
あまりにも初見の事態に柔軟過ぎる。古代語を学んだからといって、なぜエンジニアと話せるのか、彼らの言語を読めるのか…言及していたら見落としてます、すみません。

■ヴィッカーズのどっちつかず感
結局アンドロイドだったのかどうなのか。ただ死を恐怖しているし、逃げる方向は間抜け。

■お馴染みエイリアンのおこり
2094年に初めて生まれたことになった原初エイリアン。当然ながらAVP等との時系列は滅茶苦茶になっているけど、こちらが正史として捉えられているのかな。

■脇役のベネディクト・ウォン氏
今やMCU作品では外せない俳優だが、本作では全くの脇役。ちょっと新鮮。

■総評
パニックホラーを背景にしているためか、深いテーマを落とし込んだSFとしてうまく消化できなかった。表面的にエイリアンシリーズとして観ると退屈な作品。でもタイトルにはちゃんと『エイリアン』と書かれてないし、こちらが色眼鏡で観てしまうのが誤りなのかもしれない。