女性達の生きる喜びと活力をゲイであるヨーロッパの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が描いた人生賛歌。
『最愛の息子の死を乗り越え母は旅立つ』
スペインのマドリード。看護師で臓器移植コーディネーターの母マヌエラは息子エステバンと2人で暮らしている。エステバンの17歳の誕生日。大女優ウマ・ロッホが主演を務めている舞台『欲望という名の電車』をマヌエラとエステバンは観劇する。感銘を受けたエステバンは、ウマ・ロッホのサインを求める為土砂降りの雨の中マヌエラと待っていた。
しかしタイミングが悪くウマ・ロッホはタクシーに乗り込み行こうとする。タクシーを追いかけるエステバンだったが、別の車に轢かれてしまい意識不明の重体に…。手の施しようがないと宣告されるマヌエラ。エステバンの臓器を提供する事に同意する。
それから3週間後。息子の死から立ち直れないマヌエラは、仕事を辞めマドリードから青春時代に過ごしたバルセロナへと旅立つ。息子が残した父への想いを伝える為に…。
女性の強さ、母親の子供に対する愛情の深さを感じられる。男性でありながらも女性の心を持つ普通では気づきにくい部分をゲイである監督自身が、性差にこだわる無意味さを表現している。
エステバンをめぐって母親である女達と、女の心を持つ男の優しい心が交錯していくが、その心は愛情であり自我への優しさなのでしょう。
娼婦アグラードの存在はとても印象的であり、彼女(彼)の内面こそ監督の描きたかった重要な部分のひとつだったと感じました。