湯っ子

オール・アバウト・マイ・マザーの湯っ子のレビュー・感想・評価

4.2
「欲望という名の電車」を先に観ておいて良かった。そして、あの戯曲に対する見方が変わった。アルモドバルは、「欲望という名の電車」を女性讃歌としてとらえているようだ。
運命に翻弄され、ボロ雑巾みたいに惨めになっても自分の生き方を貫く姉ブランチ、その姿を見て自らの尊厳を取り戻そうとする妹クレア。そんな女たちの連帯を描いた作品でもあった、と、この映画「オール・アバウト・マイ・マザー」を観て思った。

両性具有の父親と尼僧から生まれる赤ちゃん。
その父親自身の名前でもあり、血で繋がったふたりの男の子たち。3人のエステバン。
アルモドバルの心の中には、与えられた信仰と、自ら探り当てた信仰があって、そこから物語を紡ぎ出しているように感じる。

この映画が作られた頃は、世界中がHIVの脅威に慄いていた。それに伴い、同性愛者への差別や偏見も激しかったと思われる。アルモドバルは、そんな事実に心を痛めていたのだと思う。主人公マヌエラを看護師にしたのにもちゃんと意味があって、病気に対する正しい知識を伝えたかったのでは。
アルモドバルは、女性讃歌を高らかに掲げつつ、「感染者と一緒に暮らすことや、ハグやキスは大丈夫なんだよ」というメッセージも、この作品に込めていたのだと思う。
湯っ子

湯っ子