緑雨

明日に向って撃て!の緑雨のレビュー・感想・評価

明日に向って撃て!(1969年製作の映画)
3.5
何ものにも縛られない自由が故の緩い空気と裏腹に、破滅への予感ははじめから漂っている。

前半の列車強盗を繰り返すシークエンスは痛快。愛社精神溢れる金庫番が好いキャラだし、過剰な爆破、舞い散る札束も映画的で好い。そこにもう1台の汽車が不穏に現れ、突如始まる逃避行。逃げども追ってくるランタンの灯りはやがてアメリカ大陸の反対側まで2人を追い詰める。

「泳げないんだよ!」「実は人を撃ったことがない」、互いに「今ごろ言うなよ!」とツッコミ合う長閑さ。やはり二人の絶妙の間合いこそが魅力で、キャサリン・ロスの存在感が今ひとつなこともあり『冒険者たち』なんかに比べると三角関係が魅力的に成立していない。「雨にぬれても」が流れる自転車二人乗り、曲乗りのシーンも言われるほど名シーンでもないと思う。

オープニングシークエンスやボリビアへの旅程でのセピアカラーの使い方なんかはやや技巧的にすぎてあんまり好いとは思わないのだが、最後、二人が取り囲まれる屋外ダイナーの空間性の造形は素晴らしい。ラストは『俺たちに明日はない』と比べるとここも技巧的ではあるが、その直前に「次はオーストラリアだ」なんて会話を交わすのが効いている。
緑雨

緑雨