YohTabata田幡庸

明日に向って撃て!のYohTabata田幡庸のレビュー・感想・評価

明日に向って撃て!(1969年製作の映画)
4.4
中学生以来、久し振りに観た。
父のオールタイムベストで、家にDVDがある。
スペイン人のルームメイトと一緒に観たのだが、彼のお父さんもこの作品が好きらしい。60年代生まれの親父たちは、テレビとかで後追いで観ているのだろうが、何か刺さる物があるのだろう。不思議だ。

脚本、構図、カメラワーク、役者、編集、カラグレ、音楽全てが最高だった。

I can’t swim!は覚えてた。

S: Hey, what are you doing?
B: Stealing your woman.
S: Take her, take her.
はルームメイトと声を上げる笑った。

滅茶苦茶速いズーム等は、後のタランティーノに影響を及ぼしているだろう。

茶色っぽくグレーディングするのオシャレ。

子供の頃見た時、所謂西部劇じゃないし、変な話だと思っていた。今回見直して気づいた事は、

1、そもそも本作が、古き良き西部劇ではなく、スパゲティ・ウェスタンである事。
2、「卒業」「俺たちに明日はない」「イージー★ライダー」をはじめとするアメリカン・ニュー・シネマの文脈の作品である事。即ち、ヒッピー文化の終焉の作品である事。

自由やラヴ&ピースを謳ったヒッピーはいつしか現実と直面し、大人になる事を強いられる。色々と頑張って試しては見るものの、「大人の世界」には馴染めず、最後は破滅して行く。そんな時代を、古き良き西部開拓史の終わりと重ねた、物凄くほろ苦い作品だった。

私の父の好みとは全く違う気がするのだが、レッドフォードとニューマンが見られれば良いのかも知れない。

昔観た時はよく分かっていなかったが、良い作品だし、「理想と挫折」と言うテーマが滅茶苦茶刺さった。

因みに本作が公開された1969年は、ヒッピー文化、古き良きハリウッドの終焉の年と言える。それを描いた作品が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」だ。
YohTabata田幡庸

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