お話探し

ボクサーのお話探しのレビュー・感想・評価

ボクサー(1970年製作の映画)
5.0
“権力からの抑圧”との戦いを通じて、気高さ・美しさ・愚かさ・醜さ…といった人間性が浮き彫りにされる、タフで繊細なヒューマンドラマ。
メインで扱われている問題は“人種差別”ですが、根底には「この世で自分らしさを貫き生きる意味」という普遍的な問いかけがあるように感じました。

恋人が白人である事をとやかく言われても、「虐げられてきた黒人達の希望」と世間から見られても、主人公ジャックは自分の生きたいように生きているだけで、(気付いていない訳ではないのだが)さして意に介さない。
しかし権力を握る白人達は「黒人の英雄」などという存在を“政治的に不都合”と見なし、慇懃無礼な口ぶりで、グロテスクな“枠”の中にジャックを押し込めようと躍起になる。(この白人達の考えを内面化してしまった幾人かの黒人の存在が、また切ない…)
国外での長い過酷な亡命生活の果てに、大切なものを幾つも失ってしまうジャック。物語終盤、抑圧への抵抗を、彼がとうとう「止めてしまったきっかけ」そして、抜け殻同然となった彼の目に、今までとは別種の炎が宿るその瞬間。

このクライマックスの展開は、涙が止まりませんでした。
まだ全部は観れてないですが、同監督作品の中で「太陽の中の対決」と並んで最も好きな一本です。
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