もとまち

記憶の扉のもとまちのレビュー・感想・評価

記憶の扉(1994年製作の映画)
4.0
ドパルデュー対ポランスキー、鬼気迫る演技合戦。嵐の夜、警察署の一室を舞台にゴリゴリの密室劇が繰り広げられる。鳴り響く銃声と走り出す男、顔の潰された死体、胡散臭い署長の態度、雨漏りばかりの奇妙な警察署。伏線らしき意味深な描写を追ううちに、気がつけば画面にかじりついている。記憶喪失の作家と尋問者の署長、二転三転するふたりの会話も全く先が読めない。喪われた記憶を追う物語は、やがてある男の虚飾と哀愁に満ちた生涯を解き明かしていく。本作は単なるスリリングな会話劇だけで無く、人生の意味を問い直す濃密な人間ドラマとしての側面を併せ持つ。ゆえにあの「驚愕のラスト」には、単なるどんでん返しに留まらぬ普遍的な切なさが確かにあった。あとモリコーネ・マジックに満ちた劇伴は相変わらず泣ける。哀しげなEDソング(歌:ドパルデュー)も良い。
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