さゆ

台風クラブのさゆのネタバレレビュー・内容・結末

台風クラブ(1985年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

オープニング、夜中のプールサイドで「バービーボーイズ」を踊る女子生徒たち。
水着姿は艶っぽいけど仕草や笑い方はまだ子供でとてもアンバランス。
それが恣意的にカメラに切り抜かれているのに気が付いて、私は大人として少し後ろめたさに駆られた。

子供たちの閉ざされた世界のお話。
男の子をいじめて遊ぶような生徒が主要人物なのだが、そのことと倫理的に向き合うような描写はない。
客観的な善悪の視点が全く入り込まないのがこの作品の面白いところ。
最近見た作品ではむしろ一番心安らかに見れたかもしれない。

台風の激しい雨、けたたましい風の音は溜まり込んだ感情を洗い流してくれる。
立ち上る土の香り、生命の気配。

私は、友人たちとバカみたいに遊び狂う中学生だった。毎日がお祭りだった。
今思えばバカ代表は私だった気もするけど、私もクラスメイトもまるごと動物園の住人だと思っていて、から騒ぎのあとで不意に何してるんだろうと冷静になった時にはもの凄く孤独だった。

死ぬことは本当は悲しいことのはずなのに私の人生がくだらないことが謎だった。
だから当時は死を知りたくて、ネットで怪しいワードを検索したりもした。

三上くんの心の内は台詞ではあまり語られないけれど、
彼の心象風景が浮かび上がる仕組みになっているのが凄い。
ついでに当時の自分が思い出されて、書き流してしまった。

私が三上くんと全然違うのは、私はモテなかったことかな……?笑

全体的に、語録にしたくなるくらい台詞が美しいと思った。
リフレインする「おかえり、おかえりなさい、さようなら」とか
水浸しの学校を見て「金閣寺みたい!」とか。

面白い映画だった。
さゆ

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