イチロヲ

桜の森の満開の下のイチロヲのレビュー・感想・評価

桜の森の満開の下(1975年製作の映画)
3.5
追い剥ぎ行為で生計を立てている山賊(若山富三郎)が、都育ちの美しい夫人(岩下志麻)に隷属してしまう。坂口安吾の同名小説を原作に取っている、ヒューマン・ドラマ。筆者は原作を読了済み。

人間のネガポジ心理の両方に作用する刺激剤として「桜」を据え置きながら、「人間とは孤独との戦いを絶え間なく続けている生き物である」という不文律を、山賊と都人の双方向の立場から描いている作品。

山暮らしで培われた本能と都暮らしで培われた本能のぶつかり合い、またはアウトサイダー同士の心の交流劇。女中として傍らに置かれる「びっこ」の女(伊佐山ひろ子)が、有象無象の輩を俯瞰視点で眺めるようなキャラになっている。

後半部に入ると、都人の醜悪ぶりを喜劇的に打ち出す展開へと転調。原作のイメージからかけ離れた空気感に支配されてしまうが、映画版としての色付けは快調。何よりも、都のロケ撮影がスゴイため、圧倒的映像美を堪能することができる。
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