当時のアメリカ社会において「神話」のように信じられてきた核家族。
しかしそれは、父母がそれぞれの「役割」をひたすらに遂行するという、双方の犠牲の上に成り立つものにほかならなかった。
この事実を描き出した本作は、アメリカ社会の家族観に多大な影響をもたらしたといわれている。
妻&母&娘の役割からの解放と自立を求めたジョアンナ(メリル・ストリープ)の行動に目が行きがちだが、夫&父&企業戦士という役割から距離をとろうとするテッド(ダスティン・ホフマン)の奮闘もまた涙を誘う。
あんだけ家事も育児もできそうもないひとが、18ヶ月間乗り越えたってすごいことだよ…。
もともとふたりは友人、そして恋人として輝いていたのだと思う。
でも子どもがいるからこそ、模範的な夫婦をめざすあまりに破綻してしまったのかもしれない。
時代背景を意識しつつ、『マリッジ・ストーリー』(2019)と比較しながら鑑賞するのもアリかも。