ゆかちん

クレイマー、クレイマーのゆかちんのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
3.2
めっちゃ有名な作品ということで鑑賞。
親として、1人の人間として、それぞれ抱えるものや葛藤を描いた作品として良かった。
1979年の作品とのこと。
「家庭に入った女性が払う犠牲」という面について、日本ではここから20年くらい後に取り上げられるようになるのかな。
アメリカもこういう時代があったんだなぁ〜と。
社会構造を取り上げた作品として評価されたのかなぁ。



毎晩深夜に帰宅する仕事人間の夫テッド(ダスティン・ホフマン)に愛想を尽かし、自分自身を取り戻すために家出した妻のジョアンナ(メリル・ストリープ)。
その翌日からテッドは7歳の息子を抱え、仕事と家庭の両立に励むことになり奮闘する。
そして、家出から1年後、ジョアンナが息子の養育権を主張し、テッドを提訴する……。



難しいね。
多分、頑張るテッドを応援したくなるようになってるから、ジョアンナ勝手やん!そらテッドに養育権あるべき!みたいに思えるかもしれない。
そりゃ、見てて、「息子はテッドと暮らさせてあげて〜🥺」て思ったのは確か。

でも、どっちがいいのかわからないかなぁとも。
ジョアンナが出ていくまで息子はジョアンナにべったりやし、そりゃママのことは今も好きやろし。稼ぎも安定してるみたいやし。

ただ、まだ幼い子どものことを思うと、ただでさえ、いきなりママがいなくなるというショッキングな環境に置かれて。
そこから、パパとバタバタしながらぶつかりながらもようやく仲良しバディみたいになってきて、うまく生活していけるようになって慣れてきた。

そこへきて、またママと暮らすために環境ガラッと変えろってなると、それは子どもの育つ環境としてどうなのかな?と。

パパよりママといたい!て子どもが言うならまだしも、パパと離れると聞いて悲しんでたし、嫌がっていたくらいやのに。

それなら、慣れてきたパパとの暮らしを続けて、ママと会う時間を増やした方がいいんじゃないかな?と。

ジョアンナが「ビリーのためを思えば連れていくのはよくない。彼の家はここよ。」という答えをだしたのは、まさしく、と。
母としての愛があるからこその答えなんじゃなかろうか。


子どもにとって一番はパパとママが仲良く暮らしてくれることだけど、それができないというのなら。。
そういう、家族ごとに異なる問題について、優しく示していくような描き方が良い作品だなと思った。

子どもにとってせめてもの救いは、両親ともに子どものことを本当に愛しているということ。
それも、自分勝手な一方的な愛じゃなくて、子どもにとって何が一番かを考えられる愛。
2人とも、子どものためなら、身を引くことも必要とわかっている。

これ見た後、元卓球選手のニュースをみて、なんともはや…となりました。
まあ、本当のことはわからないから、何も言うことはないけどね。


てかさ、テッドめっちゃ良い人やのに勿体無い。
や、そりゃジョアンナが出ていく前の状態は、苛立ったり、解放されたくなったりするのはわかる。
でも、その結果、ジョアンナを恨むわけでもなく、訴えるわけでもなく、彼女の気持ちを想い、ちゃんと反省していた。
悪意があってそうしてたわけでなく、シンプルに無知だった。その無知を反省して成長してる。ここはテッドの良いところだね。

あと、彼も社会のバリキャリ旋風に飲み込まれて…ある種の洗脳みたいなことやろね。
だからといって結婚した相手の気持ちを考えず自己中に暮らしてたのは足りなさすぎるところだけど。
でも、昔はこういうの多いと思う。
てか、アメリカもそうだったのかって思った笑。

まあ、今の日本からみると、「働かなくても大丈夫なほどの稼ぎがある」だけマシなのかな笑。今の日本は、「働きたくなくても働かないといけない稼ぎ」となってるところに、「家事等は今まで通り女の人に」てのがあるから…。
もちろん、ここ最近は男性も1人暮らし経験してたり、その辺の意識がしっかりしてる人が多いから、マシにはなってきてるやろけど。

テッドが子どものために仕事を一日(半日?笑)で見つけて就職してるのスゲーってなった笑。

ジョアンナの女友達の、ジョアンナが出て行った後にテッドと育む友情もとてもよかった。
多分、彼女の目線が私たち鑑賞者と同じなんだろうな(テッドの自己中ぶりを見てたけど、ジョアンナ家出後の息子との美しい関係を築いていく努力を見て、彼らの関係を守りたいと願うようになる)。


演出としては、同じことを繰り返すことで、テッドたちの成長や変化を見せるのがよかった。
フレンチトーストなんて特に。


テッド役にダスティン・ホフマン。
テッドの心境を表す絶妙な表情とか良いなぁと。テッドの成長を表してた。
最初のバタバタカリカリとか、息子を怒るとこ、息子を優しく見つめるとこ、息子のために必死になるとこ。感情移入しちゃう!
背が低いんやね。あと、めっちゃ既視感。誰かに似てるのかも。

ジョアンナ役にメリル・ストリープ。
若い!笑。グッと抑えた演技。
ジョアンナ、確かに育児放棄だし、あの手紙は辛過ぎるやろとか思ったけど、全部責められるかというと、なんともなー。
自分には夢があり、それを叶える努力も能力もある。なのに、家庭に入ったことでそれを失う。自分とは何か、自分の人生が奪われるような気持ちになっても仕方ないと思う。
でも、結婚した以上、夫の人生のことも考えないといけないし、子どもがいる以上、親としての責任も。
本当は、それを夫婦で話し合って、折り合いをつけていくのがベストなのだけど、それを夫がしてくれない。
これは、妻だけが悪いとは言い切れないよねって思っちゃう。
テッドもそこに気づいて反省してるから、彼女にも救いはあるね。



結婚した以上、子どもがいる以上、離婚はしない方がいいけど、妻や夫、親である以前に1人の自我を持った人間でもある。
自分と相手を想い、その中で最善の道を見つけられるのがベストなんだろうな。
まー、実際は難しいよね。
そんなんできたらどこも泥沼にはならんよね。

色々考えさせられるところもあるのが良かった。
製作されてからだいぶ経ってるけど、普遍的なテーマなのだろうなぁとも。
ゆかちん

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