ストレンジラヴ

クレイマー、クレイマーのストレンジラヴのネタバレレビュー・内容・結末

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「"死がふたりを分つまで"って真実だわ」

※ややネタバレあり。
これから書くことは、一独身主義者のドグサレ男性から見た感想である。ゆえにその観点には偏りがあることをご了承願いたい。途中、不快に思える表現があることを予め謝罪する。

何というか、あんまりだ。
テッド(演:ダスティン・ホフマン)には同情した。一方でジョアンナ(演:メリル・ストリープ)には同意しかねた。
実はテッドと似たような経験を僕もした。別に結婚をしていたわけではないが、赤の他人の男女間のトラブルに巻き込まれて尻拭いをさせられた挙句、同じタイミングで職場の配置換えの憂き目にあった(この時の上司は女性だった)。配置換えの名目は表向きは「人手不足によるやむを得ない異動」だったが、その前後の扱いからみて好き嫌いで判断されたことは明白だった。僕はテッドほど仕事のできる人間ではないが、それでも当時は真剣に仕事をしていたので失望も並のことではなかった。この一連の出来事以来、僕は人間不信/人間嫌いになり、(表立っては言えないが)仕事にも精を出さなくなった。だから尚更テッドのことが他人事には思えなかったのだろう。だとしても息子・ビリーの親権をめぐる裁判でのあの原告側の態度は酷すぎるように僕には思えた。
もちろん、本作を観るうえでは時代や世相を加味しなければいけないと思う。公開当時は、"レディファースト"を標榜するアメリカ社会でさえ男性社会だったのだろう。だからジョアンナが声をあげて裁判を起こした事自体がセンセーショナルだったのだと思われる。だが、僕自身は社会人になった時から、女性が自分で仕事を持っていることは当たり前だったので、本作が世間一般に評価されているほどインパクトのある題材を扱っているようには映らなかった。これに関しては公開当時を生きていないと熱量というものが分からないんだろうな。
学びとしては、「完璧な人間などいない」ということ。仕事はできても、注力するあまり家庭が疎かになることもある。一方で、自分の役割が分かっていても、自由でいたい自分もいる。そこの折り合いをどうつけるか、つけられるかが夫婦の秘訣なのかもしれない。
いずれにしても、本作において一番可哀想なのは息子・ビリーだ。彼だけが唯一罪がない。実は本作の結末はハッキリとは描かれていない。だが、離婚において一番可哀想な思いをするのはいつだって子供だ。ハッキリ描かれていない以上、テッドとジョアンナがどのような決断を下したかは台詞から推察するしかないが、ビリーにとって最良の結論に至ったことを願ってやまない。