サマータイムブルース

他人の顔のサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
3.7
原作は1964年に発表された安部公房さんの小説です
その2年後に制作された映画です
小説は学生時代に読んでいます
映画はモノクロです
海外で評価の高い作家さんです

簡単なあらすじ

事故で顔に大火傷を負ったオクヤマ(仲代達也さん)は、事故後、普段顔を包帯でぐるぐる巻きで過ごしています
妻(京マチ子さん)はつれない対応
オクヤマはかかりつけの精神科医(平幹二朗さん)に依頼して、妻に内緒で樹脂製の他人の顔のマスクを製作して装着します
他人になりすまして妻を誘惑し、(自分という他人と)姦通した妻に嫉妬して、奇妙な三角関係が生まれます・・・

前衛的で独特な小説の世界観を、ちゃんと映画化できるのか、興味津々でした

まず、あの包帯ぐるぐる巻きオトコ、笑えます
私だったら、もし暗闇でバッタリ出くわしたら腰を抜かす自信あります
でも、映画では、彼が街を歩いたり、ビアホールでビール飲んでいても誰も気にしません
いやいや、おかしーでしょうが!!
どう見ても、ミイラか、スケキヨか、「20世紀少年」にしか見えないんですけど!!

冒頭で会話してるシーンがX線画像でスケルトンだったり、体のパーツを水槽に浮かべたり、終盤ののっぺらぼうが集団で押し寄せるシーンはシュール!!
意識高い系で、芸術性が高いです

ただ、気になったのが、会話のシーンが多すぎること
オクヤマは顔をなくして非常に僻みっぽくなっているのか、いちいち否定的に反論します
正直かなり性格悪いです
安部公房さん自身脚本に携わっているせいか、普通、こんな芝居掛かった言い回ししないだろ、みたいな口論が多い

あと、全体的に男尊女卑が残っていて、この辺は不快に感じました

素人意見ですが、むしろ、会話を減らして、映像で見せる演出にした方が、想像力を掻き立てて良かったのではないかと、そう思いました

それから、仲代達矢さんと平幹二朗さん、2人とも大好きな俳優さんで、強烈なオーラを感じました
2人の競演を見るだけでも価値があります

映画の中で、オクヤマは映画を見るのですが、それがサイド・ストーリーとして並行して展開して行きます
旧軍人精神病院で働く顔の右半分にケロイドの跡が残る妹と、その兄の近親相姦のお話し

その妹さんが目が醒めるほど透明感があって、美しい

妹「にいちゃん」
兄「ううん?」
妹「そっちの側から見ると私、綺麗?」(ケロイド側を隠して)
兄「ああ、綺麗だよ」
妹「どのくらい綺麗?」
兄「綺麗すぎるくらいだよ」

気になって調べたら、入江美樹さんという女優さんでした
ロシア人とのハーフらしいです
小澤征爾さんの現奥様とのことです
現在77歳、お年を召しても上品で美しいのはお変わりないようです

昭和の渋谷駅周辺や新橋の街並みがレトロで素敵
小説もまた読んでみたくなりました