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他人の顔のクリームのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
4.0
冒頭、レントゲン映像で喋る姿が斬新。そして、顔を失い包帯でぐるぐる巻きの男。怪しい医師と看護師、またも一瞬で引き込まれました。勅使河原宏監督×脚本·安部公房。「砂の女」同様、こちらも面白かった。マスクの装着シーンは、凄く自然で古い作品なのに技術の高さに驚いた。また、ラストの沢山の崩れた顔のマスク姿の人々の映像は、まるでホラー。内容も余白のあるラストで好みでした。

事故で顔に大火傷し、顔を失った主人公は、精神科医で人工皮膚を使った整形の研究をしている医師により、他人の顔のマスクを手に入れた。顔を失って以来、妻や回りとギクシャクしていた男は、息を吹き返し、二重生活を送るようになります。男は、妻を別人として誘惑するのですが…。



ネタバレ↓



男は、妻に拒絶され、他人の顔を手に入れ、妻を誘惑し、復讐しようと思っていた。精神科医はマスクに実験的興味を感じ、 彼に以後の全行動の報告を条件にマスク作成を引受けた。
彼はアパートに2部屋を借り、2人を使い分けようとしたが、管理人の精神薄弱の娘には、2人が同一人物だとあっさりバレた。しかし会社の秘書が気付かないと分ると、彼は妻を誘惑し一夜を共にした。翌朝、妻を激しくなじると、彼女は初めから夫である事を知っていたと告げ、流石に限界を感じ立去った。
彼は、自分を証明するものは何もないからと女を襲った。逮捕された男は、 診察券からマスクの医師と繋がり、医師が男を引き取った。医師がマスクの返還を迫るが、男は拒んだ。そして、男は医者を刺し殺した。
ラストは、彼等の背後を全員が崩れた顔のマスクを着け、歩いて行くのでした。
本作途中で、男が昔観た映画が回想されます。旧軍人精神病院で働く美しい顔の娘。だが、彼女の左半分にはケロイドの跡があり、とても気にしていた。ある夜、兄と近親相姦をした娘は、夜明けに海へと消えて行く。恐らく背景的に長崎の原爆があり、ケロイドは、原爆によるものだったと思われる。

顔に火傷の跡がある男と女。
他人の顔で生きようとする男と自分らしさを保ったまま自殺した女。
対称的だった。
男は、顔を失う前からプライドが高く自尊心の塊、他人が自分に一目置かないのは許せない人だったのではないか?
たがら、生きて別人になり皆を見返したかった。
少女は、傷付く事に疲れ、生きる事を止めた。
また、妻の苦しい心情も良く描けていた。愛する人の顔が損なわれた時、人間的には愛していてもその変わり果てた顔を受け入れるのは、キツイ。
事故で顔が失われたのだから夫に非はない。苦しみの中にいる夫を受け入れる事が出来ない自分を妻もまた許せなかったのだと思う。
主人公の男の性格に難があり過ぎて、他人の顔を被ってもバレる。本人だけが騙せていると思う滑稽さも面白かった。
色々散らかってて、答えが出ないし、医師が殺された理由も解らない。
かなり難しい内容で、答えが出ないけど間違いなく衝撃は受けたし、面白かったです。
いつか、再観賞したい作品。
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