ベビーパウダー山崎

スタンダール・シンドロームのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

4.0
キチガイの殺人鬼に強姦された女性が、その傷ついた身体も心も受け入れられず徐々に狂っていく、とても寂しく哀しい話だった。頭が完全におかしくなり叫び続けるアーシアを警官たちが抱きかかえてのラストはなんだかグッときてしまった。被害者に加害者の暴力性が転移する。身に降り掛かった悲劇(不運)を克服出来る人もいれば当然飲み込まれる人もいるわけで、一度堕ちた闇からは決して這い上がれない終わりなき痛みになにかこう、やるせない気持ちになった。序盤のイメージ、海の底まで沈み深海魚とディープキスする時点ですでに地上は見えなくなっている。
ほとんど同じ顔した娘を厳しい物語(世界)の中心に置き表現し続けたダリオ・アルジェント。俺が親戚なら力ずくで絶対に出演させないが。どんな狂った映画でも子犬が飼い主にどこまでもついていくような従順さで精一杯演じているアーシアはほんと偉いよ。