ガス欠ポルシェ

三十四丁目の奇蹟/34丁目の奇蹟のガス欠ポルシェのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

この映画のテーマは、「幸せに向かう時は常識を疑え」という事だと思います。無邪気にサンタクロースを信じる事を美談として描いたものではありません。
サンタクロースと聞けば、私たちが即座に実在を否定する架空の人物です。そのサンタクロースの存在を信じる事が、主人公の少女の「幸せの鍵」になっています。この物語を通じて、私たちが、常識や固定観念と対立する考えを安易に否定し、敵意まで抱いてしまうことに警鐘を鳴らしています。

もちろん、現実世界にはサンタクロースはいないでしょう。しかし、この映画の世界においてサンタクロースが実在するか(そして「彼」がそうであるか)を判断するのは、登場人物、そして私たち鑑賞者です。結局、映画の中でその証拠は示されません。

常識や「これが現実だ」という認識は、過去のデータを元に判断したものでしかなく、それは未来を完全に予測するものでも、目の前に起きている事の意味を保証するものでもありません。
しかし人は慣習となった思考に囚われ、夢や幸せに向かって進む事をやめてしまいます。
「過去から判断すれば、どうせこうなる(こうである)に決まっている。それが当たり前であり、否定するのは愚かだ。馬鹿げたアイディアを信じて行動するのは時間の無駄であり、後悔しか生まない。」
このような考えから脱却するには、常識や過去のデータを捨て、賭けるしかりません。
つまり、そのテーマを、常識を打ち破ってサンタクロースを信じるかどうか、という問題のアナロジーで描いているのが、この映画です。

少女にバカなことなど信じるなと教育したのは、それが彼女の為になると信じていた、彼女の母親でした。
映画を通して、サンタが多くの人の常識や信念を変えていきます。
少女が見つけたのは、幸せでしょうか、不幸でしょうか。ぜひ見てみてください。