真田ピロシキ

アダムス・ファミリー2の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

アダムス・ファミリー2(1993年製作の映画)
3.9
この映画は悪い女デビーに誑かされるフェスター叔父さんとデビーの悪知恵によって嫌でたまらない"健全"なサマーキャンプに送られるウェンズデーとパグスター姉弟の話に分けられるが、面白いのはサマーキャンプの方。皮肉がてんこ盛りで健康で陽気でなければ許されないとするマッチョへの反逆に胸が空く思いをしたネクラはたくさんいるはず。うるせー白より黒が好きで何が悪い。インドア派で何が悪い。アンチディズニーは奴らが大きくなりすぎてる今再び必要。

最高潮に盛り上がるのは劇のシーンで、"未開"のネイティブアメリカンの役にされたウェンズデーが脚本を無視して「我々はこの後居留地に閉じ込められ路上で物売りをさせられる。白人を燃やしてしまえ」と陽キャの白人集団に反旗を翻す。ネイティブ側のキャストが有色人種、障害者、はみ出し者とマイノリティで揃えられているのが強い意図を込められてて、当時はそんな言葉なかったがポリティカルコレクトネスを感じられ今でも十分に通用する内容。日本でもこの劇を翻案できる。北海道や沖縄舞台で。杉田水脈みたいな奴らが噴き上がり反日左翼と喚き出すこと間違いない。

しかし本作を昔と同じように受け止められるかと言うと難しいところもあって、今は陰キャに受ける印象が全く違う。ネットで自意識だけが肥大化したキモオタがマジョリティに加担してマイノリティを攻撃する事例を見続けているために、むしろサマーキャンプの意義を理解できてしまいそうなのだ。ネットばかりやってないで少しは外に出ろ。気持ちの悪いことばかり口走って人に無意味な不安感を与えるんじゃないとね。本作の頃は社会にちゃんと良識が存在してたからこういうブラックジョークが面白いものだったのに、社会が笑えないジョークのように露悪化した今では意味も変わってくる。

そんな風に作品を取り巻く状況は変わってもウェンズデーは最高。不機嫌な表情と不気味なスマイルの破壊力。冴えないジョエルを好きになる姿は後の『バッファロー66』の姿を彷彿とさせるダメンズ クリスティーナ・リッチ。ずっとデレてはあげないオチもウェンズデーとして正しい。今ウェンズデー主役のドラマやってるんだっけ?近々ネトフリに一時復帰するのでその時見ときたい。