ドナウ

アモーレス・ペロスのドナウのネタバレレビュー・内容・結末

アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

監督の亡き息子に捧げた作品らしく、愛と喪失の物語。オクタビオは愛する女、バレリアは美しい脚、エル・チーボは家族を失う。そして犬が暴力、不安、居場所、子供といったキーワードとして現れそれぞれに影響を及ぼす。それは闘犬の力(兄の力だと思った)によって暴力に魅入られ、飼い犬が暗く深い闇の中に迷い込み不安と恐怖に苛まれ、捨て犬達を殺られたことで居場所がなくなり旅に出ることになる。最底辺の暮らしは常に暴力に晒され、芸能という職業の不安定さ、社会的にも居場所のない浮浪者、そんな人達の内面を犬として再現しているように見える。エル・チーボの犬が一掃されそこに闘犬が収まると、依頼された暗殺の方法が残忍(まるで闘犬)になったり、バレリアの広告の脚が木で隠される演出が面白い。どこを切り取っても希望が見えてこず、特にラストの渇いた大地は絶望というより涙も枯れ果てた諦念にも見えた。

我らもまた失われし者ゆえ…命を失った者、そして愛する者を失った者。
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