SNG

百万円と苦虫女のSNGのネタバレレビュー・内容・結末

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

結構ラストにぽっかーんとしてしまいました。
出逢わんのかい!!!!そこで終わりかい!!!!まじかよ!!!!
結構この気持ちは、秒速5センチメートルを見た時の感情に似ている。
出逢わないのか……次の町へ行ってしまうのか……。築き上げた人間関係の中であがくわけじゃなくて、すっぱり切り上げて次の町でこそ逃げずに自分の足でたつぞ!って旅立つのか……
個人的には結構フラストレーションが溜まる終わり方でした。
主人公の鈴子は短大を出てバイト生活。
就職もできなかったことに負い目を感じている。
バイト先の友達に家を出てルームシェアをしようと誘われるも、家を決めてから実は友達と友達の彼氏と3人でのルームシェアってうちあけられた挙句、いざルームシェア当日、彼氏と友達は別れてて、鈴子と友達の元カレとのルームシェアになってたり、もう惨劇。断れよ。
友達の元カレは性格くそ悪くて、鈴子がその日たまたま拾った子猫を、鈴子の留守中勝手に捨てられ、子猫は路上で死亡。
ブチギレた鈴子、元カレの持ち物を全部無断で捨てて前科者になる。
罰金刑ですんだものの、ご近所の噂になり、家族からは腫物扱い。弟から詰られて売り言葉に買い言葉、百万円溜まったら家を出ていって自立すると宣言し、そこから鈴子の百万円転居生活が始まる。
クソ生意気だと思った弟はほんのこ勉強はできるものの学校ではいじめにあっており、それを家族に打ち明けられずに我慢の毎日。
前科がついて近所からコソコソ言われても気にしない姉にイライラしていたけれど、いざ出て行く前に、姉が真っ向から周囲の揶揄いに対峙していく姿を見て羨望の感情に気がつき和解する。手紙を書いてねとねだられて、鈴子は弟に手紙を書くと約束をする。
以降、弟への手紙を軸に、転居シーンが綴られるけれど、鈴子自身の気持ちはラスト近くまで語られず当たり障りのないものになっている。
鈴子は自分の気持ちをあまり話さない。他者に理解してもらおうという気持ちがまずない。
最初は海の家へ行き、次に山間の農家へ住み込みで働かせてもらい、最後に地方都市のホームセンターで働きながら暮らす。
鈴子に関わる人たちは、大体良い人なのだけど、鈴子はあまり打ち解けることもなく百万をため、次の町へと行ってしまう。
海の家では、近所に住むイキリ集団たちに「可愛い子が来た」と揶揄われてイライラする。あまり関わらないようにすごしていたけど、そのうちの一人が鈴子に片想いしていて一生懸命ナンパを繰り返す。
結局めちゃくちゃいいやつで、鈴子のことを友達と言って仲間内のバーベキューパーティーに誘ってくれたりなんかするんだけど、鈴子は最後まで心を開くことなく、別れも告げずに次の街に移る。
海がダメなら山だろうと山間の桃農家にお世話になり、農作業の手伝いをする鈴子。
農家の息子は、朝起きないからと起こしに来たり、風呂の説明やらなんやらを風呂に入ってる時脱衣所に立ってしてきたりと、都会の人間にはビビる距離感で接してくる。
お母さんも息子もとてもいい人なんだけど、鈴子がなまじ美人であったもんだから村おこしのPRをしてほしいと村長に担ぎ上げられ、村民会議でテレビにでろやらなんやら言われて喧嘩をし、結局次の街へと移る。
この農家にも鈴子は心を開くことはなかった。
田舎の村ぐるみな付き合いは自分には合わないと思ったのか、次は東京から電車で行ける地方都市。
そこのホームセンターへバイトに行き、そこで知り合った同僚の中島に心惹かれる鈴子。
お茶の誘いとかを自分から受け、さらに自分の境遇を中島にはすらすらとしゃべってしまい動揺する。
中島も鈴子のことが好きで、二人は付き合うようになるが、バイト先に中島と同じ大学の女の子が入ってきて、彼女と仲良くしている姿を見たり、中島が鈴子にお金をせびってきたり、鈴子はだんだんと中島に対して不信感を抱くようになる。
最終的にお金がせびれるから自分と付き合っているのだろうと突きつけ、中島との関係は破綻。中島は本当は鈴子に次の町へ行ってほしくなくて、お金がたまらないようにとお金をせびるふりして取り上げていたんだけど、鈴子はそんなこと知る由もない。
中島との関係を終わらせた夜、弟から手紙を受け取る。
弟がいじめにたちむかっていったこと、姉が逃げずに周囲へと立ち向かっていった姿を胸に自分も転校とかせずここで立ち向かうと決めたことなどが綴られており、鈴子は泣く。
誰も自分を知らない街で暮らしたがっていた鈴子。
自分のことを周りが知り始めてしまうと次の町へ行ってしまう鈴子。
弟が「姉ちゃんは逃げなくてすごい」って言っていたけど、本当にすごいのは、その場にとどまって立ち向かっている弟であり、自分はずっと逃げ出していたのだと、
多分ここで気がついて、
だから、この街でしっかり向き合ってぶつけ合って暮らしていくのかと
……そう思っていたんですけども。
結局そういうわけでもなく次の町へと引っ越していってしまった……。
弟へ手紙を書き、「次の町で今度こそ自分の足で立って生きていこうと思います」って言って、次の町で鈴子が逃げ出さずに生きていけるのかどうかっていうのは結局わからずじまい。行動で成長を描かれたわけではなかったから、まじかよ!ここで終わりなのか!?ってモヤモヤしてしまったのかもしれません。
わたしは鈴子に中島ととことん話し合って、この街で生きていって欲しかったんだよな。
中島は実はお金をせびっていたわけじゃなく、鈴子に次の町へいってほしくなくて、だからお金を取り上げてたんだって、鈴子は知らない。
ホームセンターをやめるとき、中島は今まで鈴子から取り上げていたお金を返すけど、特にそれ以上の言葉も交わさずに、鈴子はでていき、中島はぼんやりと見送る。
これじゃいけないと中島、あとから鈴子を追いかけるけど、結局めちゃくちゃニアミスで出逢えずに終わるのしんどいんですが〜〜〜〜!!!???そこはちゃんと再会して欲しかったと思ってしまうんだけど、これが切なさとか情緒とかいうやつを大切にした結果なのかもしれない。
再会できない方がリアルではあるけど、映画に求めてるのってリアルさじゃなくない????ひたすらに後味が悪いよ!!!!
鈴子は手紙で自分の気がついたことや、覚悟をしたためていたけど、目に見える「変化」を感じられずに、一体この映画は何を言いたかったんだ……ってなっちゃったのが嫌だったのかもしれない。
ひとはタイミングを逃してしまうと言いたいことも言えずに大切なものを失ってしまうからちゃんと想いは言葉にしていこうねっていう教訓を示したかったのか……?
ラストでしょんぼりしてしまったけど、蒼井優はかわいいし、行く先々でお世話になる人たち軒並みとても良い人たちで、街が変わるたび新生活に一緒にワクワクできたりする面白い映画だなと思いました。
ラストがマジで嫌だったので評価は3にしたけど、「自分探しじゃなくて自分を知る人から逃げてる」って言ってた鈴子がきっと次の町では地に足をつけていたり、最終的に中島と話し合えていたりするといいんだけどなと思いながら、こういう余白をこちらに任される映画向いてないなと痛感しました。
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好きだった言葉メモ:
家族でも恋人でも長く一緒にいられるコツって一番大事なことは言わないでいることなんじゃないかなと思っていました。おとなしく、適当に愛想笑いをしていたらトラブルなく過ごせると思っていました。いつのまにか何も言えない関係になってしまうのは不幸なことです
人は出会ったら必ず別れるのだと思います。その別れがこわいから姉ちゃんは無理をしていました。でも出逢うために別れるのだと今気付きました。好きな人とお別れしたってちっとも泣くようなことじゃないと思います。
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