このレビューはネタバレを含みます
同居人の荷物を全部捨てたことで刑事訴訟され前科持ちになってしまった鈴子。家にも近所にも居場所がないと感じた彼女は100万円を貯めて家を出ることにした。引越した先でもまた100万円を貯めては次の場所に移動していく。でもそれは、様々な環境を感じたいというポジティブなものより、面倒な人間関係からの逃避行のようなものだった。いじめに立ち向かえない弟の拓也と、全国で逃避行を続ける鈴子が逃げずに戦う決意を固めるまでの話。
自分なんて見つけたくない、何をしていたって勝手に見つかってしまうものだから
鈴子はそんなことを言っていたけれど、彼女の転々とした生活では確実に彼女の「自分」が見えてきていたと思う
新しい土地に行って誰も自分のことを知らない環境で生活しはじめても、人と関わるうちに厄介事に巻き込まれる
それは、彼女自身でもどうしようもない「自分」が引き寄せたものだろう
どこへ行こうと人と関わる限り「自分」というものが顕在化してしまうことは避けられない
あと、最後の鈴子が旅立つシーンで駅の階段を登りきり、「(元カレは)来るわけないか」とドーナツをかじりながら言ったシーンが清々しくて好きだった。
ところで、弟の拓也の方はちゃんと受験してレベルの高い学校に行った方がいいと思う。
いじめをするような低俗な人間と関わる時間は本当に人生の無駄なので、そのような環境を抜け出すことは逃げではなく戦っていることになるのではないか。