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忍者武芸帳のmitakosamaのレビュー・感想・評価

忍者武芸帳(1967年製作の映画)
3.4
観たかったやつ!色々興味深い1本でした。
シンプルに感想を言えば結構楽しめた。普通に白土三平が面白いもんな。

主人公と言えるのが結城重太郎。元々は出羽の城主の息子だったがクーデターで追い出され浪人の身。
城を乗っ取ったのが元伊賀忍者の坂上主膳と螢火の兄妹。蛍火カワイイ。
これに影丸率いる影一族が重太郎と共に一向一揆を率いて城を攻める。
ここまでが序盤。いきなり内容が濃いが、話が更に二転三転する。

逃げ延びた坂上主膳は明智光秀とソックリな為に影武者となる。まさかの展開。
そして信長は長島一向一揆を3度にわたり争い鎮圧。

この一揆に荷担していたのが影一族。元々馬借だったとの説明がある。
馬による運搬を生業とする馬借だが、古来より一揆を先導する集団であったとの史実があるらしい。ナルホドー。こういう考証の盛り込み方は流石の白土三平だな。
一方重太郎は影丸の妹・明美と恋仲になるがコレを坂上主膳に利用され、重太郎は影丸を仇と誤解し戦うこととなる。

こうして織田と明智の権力争いに、農民の一揆を率いる影一族、影丸を追う重太郎、明智の影で暗躍する坂上主膳と、多面的に争いが起きる。
群雄劇としてのワチャワチャ感が良い感じに纏まっていると思う。この構成は流石。

しかし中盤に番外編と称して影一族のメンバー1人1人の過去編を入れるのは頂けない。普通、実写の時代劇映画でこんな構成あったら壮大にツッコまれるだろうよ。今作が漫画の切り貼りだから許されるとでも思っているのか?

それにしてもATCと白土三平との相性の良さは皮肉だ。やはり60年代の左翼思想の広がりは白土のマルクス主義が支持された一因だし、大手映画会社からの脱却を試みたATCにも同じことが言える。

そして触れなければいけないことが、この漫画切り貼りという表現方法だ。やはり漫画のコマをスクリーンで流せば、動かないアニメ風のモノが作れると思ったのだろうか…?
悪いがこの試みは、漫画にもアニメにも冒涜だと言える。漫画には漫画のコマ割りやページ割りがありそこに演出があるし、アニメーションにも同じことが言える。
漫画を切った貼ったしてもアニメとは言えないんですよ。
やはり実写畑のATCにはアニメも漫画も同一視する理解の無さがあったのだろう。
ATC自体が共産主義的と言いながら、漫画文化を搾取している構造がこの映画の本質だともいえる。
作品としての面白さとは別に、非常に評価しづらい映画だと思う。
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