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女嫌いのotomisanのレビュー・感想・評価

女嫌い(1964年製作の映画)
3.9
 お堅い鉄屋も火が着きゃ熔ける、てなわけだが、そんな下世話なところに低回なんてしない、何となく景気のいい感じ。なにせオリンピックと新幹線の半年前だし。
 とは言えだ。若い香山ホステスに暖められた笠氏が冥途の土産話みたいにのぼせるのを21世紀なら大炎上のところを俺さまが300万で火消しを務めてやるんだからありがてぇだろうと強請屋三上がやってくる。こんな困った父さんをハブにした人間関係が、ちっとも堅くない旧友のり平氏、その娘のトヨタ販売倍賞、倍賞の意中の人で笠氏子息の朴念仁地震研、その弟、唐変木のマルキスト?高校生、娘婿の新聞記者として配される。
 みんな、笠父さんの美人局事件のはずみで転がされていくんだが、そこがその、調停役がのり平氏から記者氏を経て遂に火元の香山嬢に戻るとあって、所得倍増大車輪な男どもは強請屋で香山嬢の実はヒモ状態の三上君ともどもさっぱりいいとこ無しだ。
 これに引き替え当の香山嬢のC調ケセラセラ、結果、よろめき亭主を尻に敷くに至るおかあさん、調停の傍ら土地投機にも失敗なのり平氏の観念を受け止めて、うちとこに御出でよ、な藤間お上といい、どこか女の懐が大きい。
 いっぽう、パッとしない男どもに輪をかけてパッとしないのが倍賞だが、忘れた頃に話の中心に戻って来るや、ダメ父ちゃんのり平氏の一世一代の後押しもあってやっと朴念仁とくっつくに至る。そりゃあそうだろう、笠父さん老いらくの悲恋が看板じゃ湿っぽくって敵わん。
 しかし、うら若い二人の団円を導くのがかののり平父ちゃんの笠父さんへのお小言である辺り、渦中の人が倍賞とあってなんだか渥美の寅さんが妹さくらの事をどうか頼むと談じ込むような感じに重なってくる。それもこれから4年後、同じ4年後には唐変木も大学生、GNPも世界2位、世界の先端をゆく笠父さんと地に足をつけて流れてゆくのり平父ちゃん、男たちの明日は右に左にいろいろだなあ。
 すると馬鹿を抜かせ男ども、と倍賞が雪山をオープンルーフで朴念仁を活火山に連れてゆくんだが、一向に唇に触れもせずな地震研に業を煮やしてスピンをかけるとあら不思議、朴念仁の唇を奪ってしまってお山の妬ける事、焼ける事。聞けば山の神は女神だそうで倍賞はいずれ若後家の運命か?
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