きねぼっち

バニシング・ポイントのきねぼっちのネタバレレビュー・内容・結末

バニシング・ポイント(1971年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、コワルスキーがUターンしたのは、なぜか?

それは、この世からの脱出口を見つけてしまったから。
門のように二台のブルドーザーが並べた分厚いブレードの間にある、わずかな隙間がそれ。

簡単に入れはしない細い間隙だが・・・全力で助走をつければイケる!

そうコワルスキーは判断したに違いない。
決心した彼が助走を開始し、ブルドーザーに衝突するまでの、走馬灯が映画の内容になってます。

衝突直前、コワルスキーの見るブルドーザーの隙間はまぶしく光っている。
また、会心の笑みを浮かべるコワルスキーの顔は光に照らされている。
彼は彼にしか見えない光を目指して驀進しているのである。

ラスト、車は爆発炎上だが、彼は死んではいない。
エンドロールに破損した車内を消火しているシーンがあるにもかかわらず、死骸を搬出している様子がないことと、題名が消失点であることから、おそらく彼は文字通り消えた。

どうしてかというと、コワルスキーはとっくにこの世に生きていなかったから。
盲人であるスーパー・ソウルが「同族だ」と言っていたのは、コワルスキーはこの世にまともに目を向けていないから。
彼は世の中に対して完全に愛想をつかしているのである。

だから、そういうくだらないものにとらわれず、完全な自由を目指しているが、世の中のしがらみを総て断ち切ると言うことは、生きながら死ぬのと同義ではなかろうか?

それは浮世に執着する常人には到底ついていけない境地であり、凡人はみなコワルスキーの雄姿を一目拝もうとブルドーザー付近に集まるし、接触した人たちは謙虚で無欲なコワルスキーに好感を持つし、中には悪意をぶつけようとする連中もいるが、みんな結局は置いてきぼりにされてしまう。

にしても、この映画って絶景の連続ですよね!
アメリカの雄大な大地と、青い空に浮かんだ雲が美しい。
カーアクションも丁寧に作ってあって、すごい迫力。
ヒッピーなどの当時の風俗がうかがわれる情景も楽しい。
あと、ストーリーがシンプルなのもいいですね、寓話感がある。

映画館で見れなかったのは残念だったけど、内容が素晴らしかったのでOK!!!
きねぼっち

きねぼっち