YasujiOshiba

バニシング・ポイントのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

バニシング・ポイント(1971年製作の映画)
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BD。23-35。34はM.ガッローネの『Primo amore』。セミナーから解放され、積読の円盤を回す。最高だ。映画ってこんなに楽しいものなかのか。白くてエロティックなダッジ・チャレンジャーが走り出す。それだけでゾクゾクする。金曜日。コロラド州はデンバーから西へ。フロンティアを開拓するのでもない。牛を追うのでもない。ただ月曜までに車をカリフォルニアに届ければよい。

それだけの仕事なのに、コワルスキーのチャレンジャーはチャレンジしないではいられない。ユタ州を抜けて停止違反を無視。ポリスに追いかけ回されたネヴァダ州では、砂漠のメビウスの輪に迷う。ぼくらは彼の心のフラッシュバックで、ヴェトナムで負傷し、恋人を海に失い、不正を正して警官を辞めさせられたことを知る。

スピードをやるけれど薬に溺れることはなく、挑んでくる相手の命も心配してしまうお人好し。徳を積んで、悪運に翻弄されるヒーローは、ただ自由のためにアクセルを踏み込わけだ。まさにラスト・アメリカン・ヒーロー。

だからアメリカでは時代遅れ。いや、時代の先を進んでいたのか。イギリスで、ヨーロッパで大ヒットをとばし、少しずつ人気が出て、やがてカルトとなる。ぼくも劇場で見た記憶がある。予告編だけだったのかもしれない。

それでも今、BDの高画質を大画面に映し出してみれば、おもわず落涙。ああ、映画が好きでよかった。
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