伊達巻

Endless Waltz エンドレス・ワルツの伊達巻のレビュー・感想・評価

4.8
若松孝二はよく覚えてないプロパガンダ映画しか観たことがなかったからこんなに素晴らしい作品を撮るのかと一気に大好きになった日本版『ラ・ピラート』みたいな趣がある、死ぬほどドロドロしてる関係の話でありながらそこには絶望的に清々しい雰囲気が漂っていたりする。母と男と娘それぞれの視点があって交わったり交わなかったりするが、結局いくら愛してると言ったって人生なんて所詮孤独な物語なんである。期待と矛盾と誤解、そして恋する肉体。美術もメイクもめちゃくちゃかわいいし(メイクアーティストの友だちと一緒に観たからいろいろ感心できて楽しかった)画もバッチバチに決まっている。空間を舐め回したり裂いたりして対象を捉えるカメラの運動の迫力よ…!!技術面だけ観てもめちゃくちゃに見応えがある。薬物にセックス三昧、結婚したり離婚したり、殴ったり殴られたり。この哀れさを軽蔑することができない。序盤から何度か涙が込み上げてきていたが、もはや言葉を失ってサックスを掻き鳴らすことしかできなくなった阿部に対して大衆音楽の方がよほど真実を伝えてくれるわとかなんとか言いながらスピーカーの音量を上げる鈴木のシーンでついに溢れてきた。小さな宇宙を泳いでいるような窒息感と、同時に竜巻みたいな激しい興奮が、体の中に巻き起こる。まじで面白かった。気持ち☆4.7くらいなんだけどこの映画を観るまでの愉快な経緯の思い出を含めて
伊達巻

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