胃潰瘍のサンタ

大日本帝国の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

大日本帝国(1982年製作の映画)
3.6
とりあえず一言。長かった……

『二百三高地』以上に、笠原和夫の屈折した戦争観が見える。
自衛戦争ではあるけど、やっぱり死にに行くだけ。
反戦と言いたいが、戦いきった自分たちのことはどうしても否定できない。
戦争責任を問うと言いつつ、ついつい「敗戦」の責任者を探している。でもやっぱり「敗戦」ではなく「反戦」という立場を取りたい。
結果、中間管理職は下を庇い下も上を庇って皆死んでいき、結局残るのが天皇だけ、という物語に。

まあ同意するかはともかく、なるほど昭和天皇の責を問いたくなる気持ちは映画を観るとよく分かる。「陛下の言葉で終わるんならどうしてもっと早く……」というセリフに色んな感情が現れていた。
何より、東條英機については今見ても解像度が高いと思う。昭和史研究で読む東條って大体こんな人物。
開戦の責任を取るために「役割として」独裁者を演じざるを得なかった能吏。その行動原理は全てが「陛下のため」。たまたま悪役になってしまっただけの忠臣が最も国家を滅ぼす役に立ってしまうという、皮肉な構図。
お経みたいな「軍部独裁・戦争ハンタイ」でうやむやにしないのはさすが笠原だ。

とはいえ、全体としては中央の話よりも前線の男女を描いた泣かせギトギトなメロドラマが長く、はっきり言って無駄に疲れた。一番時間を割いてるあおい輝彦の床屋の話とか、絶対なくても成立するでしょ。
ドラマと言えば愁嘆場。愛情の描写と言えば濡れ場。大作といえば長尺。そういう安っぽさまでいかにも岡田茂の東映らしい。

篠田三郎の死に様なんかは皮肉が利いていて面白かったのに、実に惜しい。