シズヲ

風の無法者のシズヲのレビュー・感想・評価

風の無法者(1967年製作の映画)
3.1
リー・ヴァン・クリーフ主演のマカロニ・ウエスタン。とはいえ“潜在的に善き心を持っているアウトローが改心してコミュニティに帰属する”というグッド・バッド・マン的な筋書きなので、ある意味で本家西部劇に近い趣がある。

荒野を駆ける駅馬車を映したロングショット→スマートな給料泥棒の様子を描く冒頭のシークエンスにはワクワクさせられるが、その後はテンポに欠けた歯切れの悪い展開が続く。クリーフ演じる主人公もやけに理性的なのでマカロニ的な外連味を食い止めている感が否めず、今ひとつ盛り上がらない。バイオレンスもハッタリも足りないのはマカロニ的に厳しい。アクション面に関しても冒頭の鞄窃盗を除けばそこまで目を見張るものは無いけど、即席スナイパーライフルの下りはちょっとワクワクさせられた。

全体的には煮え切らない内容とはいえ、保安官に任命される辺りから主人公のピュアさにも何となく憎めないものを感じてくる。温厚そうに見えてやけに決断的なヨーロッパ紳士、何処かユーモラスなニセ説教師のおっちゃん&ハーモニカ吹きの黒人兄貴など、脇役のキャラ付けも何やかんや印象に残る。強盗団のボスなんかは黒尽くめの風体も相まって何処となく『夕陽のガンマン』のモーティマー大佐っぽさがあって好き。所々でユーモアを滲み出すリズ・オルトラーニの音楽にも味わいがある。

ラストの遣る瀬無くも噛み締めるような余韻は憎めないが、それはそうと仲間二人はクリーフの改心劇に巻き込まれた結果犠牲になった感があって何だかちょっと座りが悪い。主人公の心境の変化を巡って不和はあったとはいえ、何やかんや愛嬌を感じる部分もあったので良くも悪くも腑に落ちなさはある。
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