イルーナ

アリス・イン・ワンダーランドのイルーナのレビュー・感想・評価

2.8
誰もが知る児童文学の金字塔『不思議の国のアリス』。
しかし、キャラクターや場面は強烈に印象に残っていても、どんなストーリーだったかきちんと説明できる人はあまりいないと思われます。
というのも、これは作者のルイス・キャロルが知り合いの少女アリスのために即興で作った話が元になっているから。
そのため、教訓も整合性もなく、オチも夢オチ。ただひたすら、アリスが次々に出くわす奇怪な現象やキャラクターたちに翻弄され続けている話。
そんな受け身な主人公は現代にはマッチしない!と言わんばかりに作られたのが本作。
悪の独裁者に支配された不思議の国。皆が圧政に苦しむ中、予言書に書かれた救世主が現れた!
さあ剣を取って立ち向かうのだアリス!

……ですが、多くの人がこう思ったでしょう。
「これ、『不思議の国のアリス』という題材でやる必要があるの?」と。
『不思議の国のアリス』がベースなら、大半の観客は奇想天外な出来事やキャラクターを期待して観に行くはず。
それが、まさか極めて王道な冒険物語になるとは。コレジャナイ感が半端ない。
ビジュアル面ではさすがバートン!という感じですが、キャラクターの狂気が表面だけで、中身は普通になってしまっているのが致命的。
作中恐らく一番狂っていて、一番バートンらしいキャラであろう赤の女王も、いつもの「異形への愛」はあまり感じられない。
「偉大な人は皆どこかおかしい」の言葉が伴ってないよ……
バートンのディズニーとの決別宣言を知った後だと、どこまで自由にやらせてもらってたんだろう?とか、近年の実写化ラッシュはぶっちゃけ「古い作品を現代の価値観にアップデート」だから、それの影響を受けたのか?とも思ったのですが、『映画作家が自身を語る』を読む限りだと、最後まで信用して干渉しないでいてくれたらしいからなぁ……
『不思議の国のアリス』とバートンは、ポップで不気味なビジュアル面の相性はバッチリだけど、根っこの部分は致命的に噛み合ってない感がある。というかインタビュー読む限りではストーリー自体あまり好きでないっぽい。
原作に忠実に映画化できてれば普通に高く評価されただろうに……

作品自体は公開当時3D映画ブームに乗って大ヒットしましたが、続編は大爆死。
やはりシナリオが物足りない、期待していたものと違うと思った人がそれだけ多かったのかもしれません。
また、「2000年代以降のバートン作品は『ビッグ・フィッシュ』以外つまらん、かつての良さがない」などとよく言われますが、実際は『チャーリーとチョコレート工場』や『コープスブライド』など、らしさのある作品も普通にあります。
なのにそればかり言われるようになったのは、本作と『ダーク・シャドウ』が原因じゃないかと睨んでいます。
特に次回作の『ダーク・シャドウ』は、一番得意なはずの題材で盛大に滑り散らかしたという絶望感が半端なかったです……

アニヲタwikiにまとめた記事
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