ちろる

草の上の昼食のちろるのレビュー・感想・評価

草の上の昼食(1959年製作の映画)
4.2
風光明媚なプロヴァンスの田舎の風景を舞台に
ジャン・ルノワールならではの絵画のような描写がたくさん登場して幸せに満ち足りる。
タイトルのイメージで、ストーリーもモネの草原の昼食のようなエレガントさを想像していたけれど、思った以上にテンポの良いフレンチラブコメ。

愛なんていらない!男なんていらない!
結婚しないで子供だけ欲しいと願ってる田舎娘ネネットが、人工授精で優秀遺伝子を残そうという公約で大統領選に出馬予定の生物学者のアレクシの実験台になろうとして、彼の自宅を突然訪ねるところからストーリーが動き出す。

ブルジョワジーで冷静な科学者のアレクシが、太陽に育てられたような無邪気なネネットにどうしようもなく惹かれてくのにも関わらず、自分でその気持ちが恋だと気が付かないで、「なんだこの火照りは??」とか言ってるのがおじさんのくせに可愛すぎる〜
恋をするのが煩わしいと恋愛を否定してる人ほど、恋に落ちた時はもう本能的欲求をコントロール出来ないという不思議な法則。
頭でとやかく考えて作り上げた幸福論も、自然の流れには抗えない。
アレクシが語る
『幸せとはおそらく自然の理に従うことなのだ』という台詞は、60年以上経った現代にはより一層皮肉に響く。
ストーリーの構造はとてもシンプルではあるけれど、河辺での全裸の水浴や、風に揺れる木々、学生たちのピクニックやバイクの2人乗りシーンなど、贅沢すぎるルノワールの世界に酔いしれて、最後まで多幸感に満ち溢る良作です。
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