みかんぼうや

草の上の昼食のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

草の上の昼食(1959年製作の映画)
3.4
巨匠ジャン・ルノワール晩年の作品。タイトルから同監督の未完40分作品「ピクニック」のようなシンプルな男女の恋愛作品をイメージしていました。

たしかに本作も表向きはシンプルな男女の恋物語です。が、その裏には、人工授精で優秀な子孫を残すことを強く提唱する科学者と美しい自然に囲まれて育った田舎育ちの娘の恋愛を通じて、人間社会における自然と科学の存在を対比的に描いた社会派性も見えます。

ただ、個人的にはその中核となる恋愛ストーリーそのものに映画としてあまり面白さを感じませんでした。

急に老人が笛を吹いて突風がふき、主人公の2人の男女が出会うというファンタジー設定。そして、昼食を楽しむ男女が急に自然の中で始める乱痴気騒ぎ。あまりの急な展開のなか、芸術性という意味では印象に残りますし、これらのシーンは人工的な科学に対するアンチテーゼとして描かれていたのかもしれません。が、正直なところ話にあまり深さを感じず、ストーリーにもキャラクターにも惹きつけられず。

時折挿し込まれるプロヴァンスの自然の美しい景色(これも科学に対する自然の活力を表すメタファー?)も印象的でしたが、終始、見どころをうまく押さえられなかった作品でした。
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