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夏時間の庭のqpのレビュー・感想・評価

夏時間の庭(2008年製作の映画)
3.5
 自然に囲まれた家で使用人と住んでいた母親が他界してしまいました。3人の子供は母親の大叔父の美術コレクションを売ることにするという話です。

 ストーリー自体は山も谷もなく、淡々と進んでいきます。勝手なイメージですが、日本や米国の映画だと相続金の奪い合いとか始まってしまいそうですが、フランス映画だから淡々と進んだ感じです。

 家で子供が育つ過程や実際に美術品と絡むシーンがあったほうが良いと感じました。視聴者も美術品や家にもっと愛着が持てて、子供たちとともに考えられるのになと思いました。そういう意味で映画としては残念で評価は低くなります。

 ただ、不思議と最後のシーンでの家の使い方を見て、残念な気持ちになりました。使用人と同じ気持ちで、美術品の価値とは関係ないところでいつの間にか愛着を持っていたのでしょう。自分の中に物を大切にしようと思う気持ちがあるのでしょう。不思議です。

 自分も親や祖父母、自分自身も含めて捨てられないからという理由で残しているものはたくさんあります。その中では高価なものもあると思います。仕方がないけど、持ち主が死んだ後はどんどん金銭的価値に換えられていくんだろうなと感じました。家がなくなれば思い出もなくなるだろうし、孫はこの家があったことも忘れてしまうと思うと寂しくなりました。

 日本も映画内の家族と同じ状況で、地元に残る人より大都市や外国に行く人も増えてきて、実家に戻ることが難しくなってきています。実際に、地元に残る人よりも金銭を稼ぎに都会やグローバルに出ていく人のほうが、せかせかしていて金銭も必要な状態が皮肉です。

 実家を残すことの大切さ、そして難しさを考えさせられました。地方に残っているものの豊かさ、大都市や外国で味わえる色々なもの両方を大切にできるようになりたいと思えました。
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