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台湾人生のyayouのネタバレレビュー・内容・結末

台湾人生(2008年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『台湾人生』 同名の書籍がある。映画ができた後に加筆されたもの。
「台湾を知ってしまったから」台湾人生を作った理由に、酒井充子監督はそう答えてある。「知らなかった」ではすまされないと思ったし、すませたくないと思った、と。

台湾映画特集でみたドキュメンタリー作品や上映後のトークイベントでも必ず台湾や台湾映画を語る際に、50年以上に渡る日本統治時代、228事件、戒厳令がしかれ白色テロ時代、1987年にようやく解除されることが話される。台湾を語る上で日本は無関係でいられる訳もなく、知らなくてはいけないはずなのに、わたしは無知すぎた。

自分たちは今の日本人以上に日本人だと。お花のいけ方、お茶の淹れ方、礼儀やマナーまでも学ばされた。日本人として生き、日本のために戦い、日本に捨てられ、何人として生きるのか。うまれてから、80代90代そして亡くなるまで、自分のアイデンティティをずっと問うてきただろう。

映画に出てきた方々の流暢な日本語の話を聞き入ってしまう。
戦後日本政府から感謝されてもいいんじゃないか、その一言をずっと待っている。
好きな日本軍歌を今でも歌う。
統治時代によくしてくれた日本人教師を慕い、毎年墓参りに日本に向かう。
と話していた姿は印象深い。


台湾の人は親日である。そう思っている人は多いだろう。私もそう思っていた。でも少し知るだけでも、何故そうなのか、複雑だし切ないし申し訳ない。
それに、日本が良かったわけでなく、同胞がやってくるとよろこんだらもっと酷かった中国国民党。それなら日本統治時代のほうがまだ良かったということだ、と監督さんが仰っていた。

映画に出ていた、日本語を話す台湾のおじいさんおばあさん。懐かしそうに優しそうに親しみをこめ、ときおり悲しそうに怒りをこめ涙ぐみ、話してくれる。もう亡くなっている方もいるだろう。
台湾の若い人、そして当然日本人が知らなくてはならないことだ。

酒井監督の台湾人生、台湾アイデンティティ、台湾万歳の3部作のあと、今後撮る予定のものがあるそうだ。それは台湾に住み撮影するそうで、何年後かに作品が届けられることを楽しみに待とう。
台湾が大好きだと監督さんさんが言っていた。私も何十年も前にも旅行で行ったけど好きだった。今はまた違っているだろう。台湾に限らず温かく迎えてくれる国にも日本が無関係でなく知らなければならないところはたくさんあるが、今回の台湾特集で複雑な台湾が、暖かさおおらかさの中に存在するんだと、少しだけでも知ることができた。
台湾の映画は好きと感じるものが多い。その理由はわからないし、今回私が感じたことが理由の一つなのかもしれない。また素敵な作品に出会い、映画によって知らない世界が広がるといい。
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