もっちゃん

台湾人生のもっちゃんのレビュー・感想・評価

台湾人生(2008年製作の映画)
3.7
日本人は「台湾は親日」と盲目的に信じているが、果たしてそうだろうか。台湾人が歩んできた歴史的背景と潜在的意識に迫るドキュメンタリー。

まず驚かされるのは年配の台湾人が流暢に日本語を話すことである。もう日本人の若者も知らないような歌謡曲も暗唱することができる。それは表面的に見ると「親日」という言葉一つで片づけられてしまうかもしれない。
しかし、それは台湾の日本統治下での教育の結果なのである。日本統治下では人民に有無を言わさず日本語教育を強要した。
今でも高齢の方は日本人と見まがうほど流暢に喋られる。

そしてもっと驚かされるのは彼らがそういった時代背景にも関わらず、部分的には日本に感謝の念を抱いていることである。統治時代の同級生たちが集まって同窓会を開いたり、恩師の墓参りをしたり、彼らは幼少期の記憶を今なお大事に胸にしまっている。
だが彼らが許せないのは「日本人」として戦争に参加させられ、命の限りを尽くして戦った台湾人らに対して日本が国家レベルで感謝の念を表していないことである。温厚なインフォーマントが突然堰を切ったように怒りをあらわにするシーンがそれを物語っている。

「日本と台湾の関係は解けない数学みたいなもの」というのはよく言ったものである。戦前日本が介入してから台湾は確実にその様相を変えたという認識を今ではもう忘れ去られている。
忘れたということすら忘れられている現代で解けない数学を解くにはまず知ることから始めなければならない。台湾をただの親日国として片づけるのではなく、その背後にある負の歴史に目を向ける必要が日本人にはある。