にじのすけ

バベットの晩餐会のにじのすけのレビュー・感想・評価

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
3.9
19世紀デンマークの寒村を舞台にした、敬虔な老姉妹とフランスからパリコミューンの動乱を逃れてきた謎の婦人バベット、そして村人達との、ある一夜の晩餐会を描いた名作。
切ればしっかりとした手応えを感じる人生というものがこの世にまだ存在している、ということを痛感させられる作品。
コーヒーがヨーロッパに渡った頃は「悪魔の飲み物」といわれていたらしいが、飲食の快楽というものは身も心もあたかも激しい恋情のように溶かしてしまい、結果、理性を失い自らの感官のとりことなってしまうことから、敬虔なキリスト教徒からは忌避されていた、そんな時代だからこそ起こりえた奇跡の物語です。
登場する人物の9割はご老人。ですがどの人物も素晴らしい表情をするんです、まるで無邪気な子どものような。
筋らしい筋はほとんど無いに等しいのだけれど、そしてなぜこんなに心の底が温かくなるのだか、うまく説明がつかないのですが、見終わった後に「良いものを見させてもらった」という気持ちになれる、そんな映画です。
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