ICHI

バベットの晩餐会のICHIのレビュー・感想・評価

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
4.0
辺鄙な海辺の寒村で敬虔なクリスチャンの父親に育てられた美しい姉妹。求愛や芸術への誘いを頑なに拒み、亡き父の教えを守りながら年老いてゆく。ディズニー映画とかだと自由の喜びを知った妹が「私らしく生きてゆくのよー」とか歌って、あくまで父🟰神の教えに従って清貧を貫こうとする姉と対立するところに邪悪な一味とか彼女たちを救い出すヒーローとかを交えて,最後はハッピーエンドとかになるしょうもない展開になりそうな設定なのだけど、この作品はかなり違う。最後までこの姉妹は生き方を変えないし、彼女たちを含む敬虔な村人たちは最後は大きな幸福感に包まれ,神に感謝する。じゃあ、物質文明を否定して心の豊かさが何より大切,というこれもある意味しょうもない展開の映画かというとそんなこともない。極めて世俗的なことで妬んだりいがみ合っていた村人たちに幸せをもたらすのは,フランスから来た家政婦バベットが自分が当たった宝くじの賞金を全額つぎ込んで作った贅沢極まりないフランス料理で、この料理自体がこの映画の最大の魅力となっている。バベットという女性の内面はそれほど深く描かれてなく、そこに一抹の物足りなさは覚えるが、美食という肉体的な世俗的な豊かさと宗教という精神的な豊かさを対立させずに成り立たせたとても豊かな映画だった。
ICHI

ICHI