BOB

サン・スーシの女のBOBのレビュー・感想・評価

サン・スーシの女(1982年製作の映画)
3.7
フランスを代表する名女優ロミー・シュナイダーの遺作。

世界人権擁護団体の代表マックスが、パラグアイ大使を射殺。逮捕後、妻に自分の生い立ちを語り始める。

「これは亡命者の物語。移民の人生。」

ナチスへの恨みと養母への恋心を抱き続けた男による儚い復讐劇ではあるのだが、それ以上にロミー・シュナイダーの女優魂を堪能する作品だと感じた。

マックスの養母と妻、一人二役を熱演したロミー・シュナイダー。マックスがヴァイオリンを弾く姿を見て涙するシーンと、目に涙を浮かべながらシャンソンを歌うシーンは、忘れられない名シーンだ。思わず貰い泣きしそうになるほど、強く心に迫ってきた。酒を飲んで自暴自棄になるシーンは、初めて見るロミー・シュナイダーの姿だった。『離愁』『追想』『サンスーシの女』と、愛に燃える悲劇のヒロイン役のイメージが強い。

美しく物悲しいメロディを持つ「亡命の歌」♪。オープニングに流れ、劇中少年マックスがヴァイオリンで奏で、エンディングには歌詞付きで歌われる。主役級の活躍だった。

最後の最後に若き日のジャン・レノ!暴言を吐き捨てて去っていく。

速報のようにさらっと流れてくる最後のテロップに驚き、声を上げてしまった。虚しかった。確かに、これは「サンスーシの女」だ。

鑑賞後、ロミー・シュナイダーの波乱万丈の人生を知った。"世界最高の女優"とまで言われるほど映画界では成功したが、私生活は決して幸せではなかったようだ。本作も、元夫と最愛の息子との死別、自身の体調不良など、度重なる困難を乗り越えて何とか完成したらしい。あの涙は"本物"だったのか。

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