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殺しのドレスのくりふのレビュー・感想・評価

殺しのドレス(1980年製作の映画)
3.5
【デ・パルマ秘宝館】

U-NEXTにて。初見は新宿の名画座だったが、濃密なのに呆気ない、隙間多きハッタリ映画だと思った。

が、デ・パルマがそもそもハッタリ屋…というか、映像に溺れ脅かしに走る病を持っている…と知ると、それも味わいとして楽しめるようになった。

言うだけ番長なんだけど、その言い方が常軌を逸しているのがオモシロイ。たかが映画、それもアリ!

本作は明らかにヒッチ『サイコ』の変奏だが、デ・パルマ脳で濾せばアラ不思議…でもない当然な、偏見炸裂セクシャル妄想ショーのできあがり!

欲求不満の美熟女妻は堂々シャワーオナニーに耽り、タクシー後部席で走行中不倫セックスに燃える。

全人類対象なのに、偶然関わるのがわざわざ、セックスで商売する美人娼婦。肉感的肢体を晒すのを厭わない。

そして、トランスジェンダーとは色物。だから精神異常者しか現れない。

…そういう骨子ですよねこの映画!www

アラフィフのアンジー・ディキンソンを映すのに、容赦ないのはいいですね。皺も弛みも隠さないし、性欲が剥き出すのをあからさまに見せている。問題は、この人物がそればっかってことだけど。悪い方のセクシーダイナマイト。爆発するしか能がない。アンジーさん、本当はいい女優なのに…。

ナンシー・アレンは本作のアイドル的位置づけで、輝いています。“単体女優”的な艶だけど本作には相応しい。この頃がピークでしたね。『ロボコップ』の頃になると、コロコロしてきます。

マイケル・ケインもまだ、精悍でした。で、あのー…。マイケルさん、本当はいい男優なのに…。

オタクな息子、キース・ゴードンくんが、ゆるむ映画の栓を締める善き役でした。サラッと描いているが、彼にかかるストレスって凄いと思うよ。デ・パルマの分身だから、サラッで済んだのだと思うけど。

改めて振り返ると、物語はアホだがハッタリは本気。画の力は今でも刺してくる。魅力はまだ埋蔵中。

今なら、トランスジェンダーが脅威と立ち向かう構図でリメイクすれば、時代相応の魅力が湧くのでは?

<2024.3.10記>
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