がちゃん

殺しのドレスのがちゃんのレビュー・感想・評価

殺しのドレス(1980年製作の映画)
4.0
ブライアン・デ・パルマ監督による極上のエロティック・サスペンス。
ヒッチコックの『サイコ』をぐっと華麗にしたと形容したい物語です。
これから本作を鑑賞しようとする方にはこの形容がトリックの解明につながってしまう恐れがあるのが悩ましいのですが、オマージュをこめてあえてこの形容をさせていただきます。

『キャリー』でも見せた華麗なカメラワークが本編でも冴えまくり、特に鏡の使い方が抜群に上手いです。

撮影側が写りこまないように工夫しながら、最高の緊迫感と不安感をあおる最高の構図の連続。
シャワーを浴びながら恍惚となる表情。
タクシーのバックミラーに写る情事。
エレベーターの中で鈍く光る剃刀の刃。
鏡を通すことでそれらの描写が、観客の手が届かないもどかしさを増幅させる。

本編からすると必要ないと思われるほどの美術館での長回し。
並の監督なら冗長になってしまいそうなところ、逆に緊張感を高めるデ・パルマタッチ。

巻き込まれ恐怖に遭ってしまうナンシー・アレン。
キュートでセクシーで明るくて、
彼女のキャリアの中でも最高の魅力を発揮しています。

デ・パルマ監督の十八番である覗き趣味も満載。
アングラっぽい悪趣味な描写が心地いい。

ストーリー的にはかなり強引なクライマックスを迎えるのですが、
それでも、ラストシーンでは劇場の椅子から飛び上がってしまうほどのショックを受けました。

『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)から、本作の次作である『ミッドナイトクロス』(1981)くらいまでが、デ・パルマ監督の作家的絶頂期であったように思います。
以降、巨匠然としてしまって、独特の粘っこさがどんどん薄れていったのが残念です。
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